2011年1月22日土曜日

生まれた子

「・・・?」
卵から生まれ出たその子(プロトーガ)は、私の顔をまじまじと見つめた・・・。

少し心に引っ掛かりを覚えながらも、私はそこを立ち去ろうとした。
するとその子は、私の後を着いて来た。
”卵から生まれたポケモンは、卵を出て最初に見たポケモンを、親だと思い込む”、
そのような事は聞いた事があるので、実際、そんなには驚いていなかった。
「やっぱりこうなるのか・・・。」と、
むしろ少しだけ、面倒臭さを覚えたほどだった・・・。

親を探すあては当然無いものだから、仕方なく、その子を家に連れて帰った。
進化前のその子は歩けないものだから、甲羅に負(お)ぶりながら・・・。
今日1日の労力を全て費やしたような気がした・・・。

その途中、その子は腹が空いているように見えたので、
手近な場所からオレンの実を採り、与えようとした。
・・・その子はそれを嫌々げに食べた。 
本来は魚食なのだから、当然だろう。 
何だか私が木の実を主食にし始めた時の事を思い出す・・・。


3日後、歩く事ができないその子の為に、そこいらで拾ってきた岩や流木を
資材に、洞穴に即席のプールを作った。
力持ちだったので力仕事はそれほど苦ではなかったのだが、私は何しろ不器用なものだから、
資材を集めるのに1日、組み上げるのに2日もかかった・・・。
「我ながら良い出来だ、そう思わないかい?」
出来上がった時、達成感のあまり、ついその子にこう話しかけたのだが、
まだ言葉が分かるはずもない。 その子は欠伸(あくび)をした・・・。
何だか出来栄えに自負していた私自身に決まり悪くなった。
恐らく、私は顔を赤らめていただろう・・・。

そのプールに、ハイドロポンプで海水を入れ、その子を入れた。
その子ははしゃぎながら泳いでいた。私はさっきとは違う達成感を覚えた気がした・・・。
気付くと、私はここ最近出さなかった、笑顔の表情を浮かべていた・・・。

泳いでいたその子は私の顔を見て、

「ものをつくるって、おもしろそうだね!」、

「ああ、そう思・・・」

私はそう言いかけた時、初めて驚いた・・・!
さっきまで私の話すら解ってなさそうだったのに・・・。
「(多分10年前のあの時と同じ、空耳だろう・・・。)」
そう考えた私は、試しに耳を塞いでみた。 耳を塞いでも聞こえるなら、空耳なのだから。
しかし耳を塞いでみたら、その子の話す言葉は聞こえなかった。
聞こえたのは、その子が実際に話している言葉だったのだ・・・・。

「どうしたの? なんでこわいかおをしているの?」
「あ、いや、何でもない・・・。」

普通はありえない事実を受け入れないまま、何だか自然な会話になっていた・・・。

「さっきみたいに、わらったかおでいてよ。 ぼく、パパのそっちのかおのほうがすきだよ!」

「えっと・・・、こんな顔だったかな・・・?」
少し無理矢理ながらに、笑顔を作ってみた。

「うん! やっぱりわらっているかお、だいすき!」
そう言って、水から飛び出し、私に抱きついてきた。

血の繋がりも無いのに、突然「パパ」と呼ばれ、複雑な気持ちだった・・・。
でも、この子の親代わりは他にはいない、私がこの子の「父」として受け入れるしかない。

愛情、というのを感じたのも一理あるが・・・。

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