ある日の昼どきの事、
私はその子と一緒に木の実を採りに行っていた。
一緒に・・・と言うか、まあいつも通り、そのこを負ぶっていたのだが・・・。
「もりのおくには、どんなきのみがあるの? まだいったことないからわからないや・・・。」
「そういえば君には初めてだったな・・・。 行ってみれば分かるさ・・・。」
少し森の中を進んだ時、空から翼をはばたかせている音が近づいてきた。
からかい屋のウォーグルだ。
「よお爺さん、また木の実採りかい? 肉や魚を我慢するのは、体にドクだぜ?」
「お前はいつもそんなイヤみを言ってくるんだな・・・。俺はこれでいいんだ・・・。」
「そんな気難しい顔すんなよ。オレっちは別に当たり前の事を言ってるんだぜ?
肉食のポケモンが木の実食べるなんて、おかしいおかしい。」
それはあいつと合う度、いつも言われる事なのだ。
いつも通り聞き流した。
「えっ?パパはいつもきのみをがまんしてだべてたの?
がまんするんだったら、べつのものをたべればいいのに・・・。」
「君までそんな事を言うのかい!?」
少し怒ってその子に言った。
「まあまあ爺さん、そんなにイライラをぶつけるのは、やっぱり我慢している証拠だぜ?
それに、お子ちゃんをそんなに厳しく叱るのも止めといた方が良いんじゃねえの?」
この少し腹立たしい気持ちはお前が作らせたんじゃないか!
そのように思ったが、さすがにこれ以上取り乱すのは、自分の意に反する・・・。
口に出すのを堪えた・・・。
「じゃ、オレっちは爺さんの我慢している、魚でも採って食べに行くとでもすっかな。
じゃあな、お子様は大切に。」
からかい混じりの言葉を捨て、ウォーグルは飛び立っていった。
気持ちが疲れた・・・。その後は、精神的にもう木の実を採る気力は無くなった。
その日は早々と家に戻った。
今日はあいつ(ウォーグル)にイラついてばかりいた1日だった。
あいつの考え方にはいつも納得いかないのだが、
私も昔はあのようだったのだ・・・。
もしかしたら、あいつの考え方が、本来の私の考え方なのかもしれない・・・。
・・・無論、そんな事は認めたくない。
とある浜辺近くに住み、考え事の多いあるアバゴーラ、そしてある日海岸で見つけた卵から生まれ、アバゴーラを実父だと思い込むプロトーガ。 親子でもなければ友達同士でもないこの2頭、プロトーガが投げかける質問一つ一つには、何だかアバゴーラに「人生」を考えるのを促しているように思えます・・・。
2011年2月1日火曜日
2011年1月24日月曜日
散歩の休憩
その子が私と一緒に生活し始めて、早くも1週間が過ぎた。
相変わらずその子は、私を「パパ」と呼んでいる。 まだ違和感を感じる。
まあ、良い気もしなければ、悪い気もしないのだが・・・。
今日は朝だけでなく、夕方も散歩に出かけた、甲羅にその子をおぶって。
夕日が綺麗だったから、という訳ではない。むしろ夕日の周り以外は、ほとんど曇っていた。
ただ何となく、である・・・。
少し歩いた後、波打ち際に腰掛けた。
座った隣の砂を掘り、波の水をそこに入れた。その子を入れる為である。
「ゆうやけのときのみずって、すこしつめたいね・・・。おひるにもおよいだから、よくわかるよ。」
「おいおい・・・、俺が木の実を採りに行ってた時、また勝手に海に行ったのかい? 海には俺達の種族を襲うポケモンだっているんだから、あまり独りでに出ない方がいいぞ・・・。」
「うみにはちょっとしかはいってないよ。 それにほかのポケモンとはなかよくしてるし・・・。」
・・・・・
いつも通り、こういった何気ない会話で散歩の休憩が始まる。
私がひねくれているからか、話が噛み合わない事もしばしばだが、
今までの、1人だけの散歩よりかはよっぽど心にめりはりがある。
疲れるのはこの後の会話だった。
「ねえねえ、『いいこと』をするにはどうしたらいいのかな?」
この子の質問攻めが始まる。
生まれたばかりだから、色々な事を知りたがるのは当たり前なのであろうが、この子の場合は違う。
小難しげな事ばかり尋ねてくる。
それだから、ちゃんとした受け答えをするのは大変だ。答えるのに2分半ほどかかる事もある・・・。
「『良い事』っていうのは、皆がそれぞれ持っている良心が決めるんだ。
良心は自分にとって利益のある道を見出させる物、つまり自分の人生を『導いてくれる物』だ。
だから良心はポケモンそれぞれで違う。 あるポケモンが良い、と信じている事が、他のポケモンから見れば悪い事だと思う事がある。
出来るだけ多くのポケモンに良い、と思ってもらえる事を行うには、
その事を行ってきた、昔のポケモンを知り、そこから学ぶ事、つまり良心を育てる事をしなければならない。
でも身近なポケモンたちの事を知る事だって必要なんだ。
その時その時の周りのポケモン達にとって『良い事』を行っていけば、自然と、良い方向に向かう事ができる、と俺は思うよ。」
いつもこうやって、思い浮かんだ事をただ言い並べるだけである・・・。
「ふーん・・・、なんだかよくわからないけど、ともだちに、ともだちのすきなことをすればいいんだね!」
「ま、まあそうだな・・・。」
話の主旨を解ってくれる訳ではないのだが、言いたい事は解っているように見える。
このような会話をこれからも続けていく内に、この子は私に似てくるのだろうか・・・?
ふと気付いたら、夕日が半球の形をしていた。
海の水もさっきより冷たくなっていた。
その子を抱え、帰路に着いた・・・。
相変わらずその子は、私を「パパ」と呼んでいる。 まだ違和感を感じる。
まあ、良い気もしなければ、悪い気もしないのだが・・・。
今日は朝だけでなく、夕方も散歩に出かけた、甲羅にその子をおぶって。
夕日が綺麗だったから、という訳ではない。むしろ夕日の周り以外は、ほとんど曇っていた。
ただ何となく、である・・・。
少し歩いた後、波打ち際に腰掛けた。
座った隣の砂を掘り、波の水をそこに入れた。その子を入れる為である。
「ゆうやけのときのみずって、すこしつめたいね・・・。おひるにもおよいだから、よくわかるよ。」
「おいおい・・・、俺が木の実を採りに行ってた時、また勝手に海に行ったのかい? 海には俺達の種族を襲うポケモンだっているんだから、あまり独りでに出ない方がいいぞ・・・。」
「うみにはちょっとしかはいってないよ。 それにほかのポケモンとはなかよくしてるし・・・。」
・・・・・
いつも通り、こういった何気ない会話で散歩の休憩が始まる。
私がひねくれているからか、話が噛み合わない事もしばしばだが、
今までの、1人だけの散歩よりかはよっぽど心にめりはりがある。
疲れるのはこの後の会話だった。
「ねえねえ、『いいこと』をするにはどうしたらいいのかな?」
この子の質問攻めが始まる。
生まれたばかりだから、色々な事を知りたがるのは当たり前なのであろうが、この子の場合は違う。
小難しげな事ばかり尋ねてくる。
それだから、ちゃんとした受け答えをするのは大変だ。答えるのに2分半ほどかかる事もある・・・。
「『良い事』っていうのは、皆がそれぞれ持っている良心が決めるんだ。
良心は自分にとって利益のある道を見出させる物、つまり自分の人生を『導いてくれる物』だ。
だから良心はポケモンそれぞれで違う。 あるポケモンが良い、と信じている事が、他のポケモンから見れば悪い事だと思う事がある。
出来るだけ多くのポケモンに良い、と思ってもらえる事を行うには、
その事を行ってきた、昔のポケモンを知り、そこから学ぶ事、つまり良心を育てる事をしなければならない。
でも身近なポケモンたちの事を知る事だって必要なんだ。
その時その時の周りのポケモン達にとって『良い事』を行っていけば、自然と、良い方向に向かう事ができる、と俺は思うよ。」
いつもこうやって、思い浮かんだ事をただ言い並べるだけである・・・。
「ふーん・・・、なんだかよくわからないけど、ともだちに、ともだちのすきなことをすればいいんだね!」
「ま、まあそうだな・・・。」
話の主旨を解ってくれる訳ではないのだが、言いたい事は解っているように見える。
このような会話をこれからも続けていく内に、この子は私に似てくるのだろうか・・・?
ふと気付いたら、夕日が半球の形をしていた。
海の水もさっきより冷たくなっていた。
その子を抱え、帰路に着いた・・・。
2011年1月22日土曜日
生まれた子
「・・・?」
卵から生まれ出たその子(プロトーガ)は、私の顔をまじまじと見つめた・・・。
少し心に引っ掛かりを覚えながらも、私はそこを立ち去ろうとした。
するとその子は、私の後を着いて来た。
”卵から生まれたポケモンは、卵を出て最初に見たポケモンを、親だと思い込む”、
そのような事は聞いた事があるので、実際、そんなには驚いていなかった。
「やっぱりこうなるのか・・・。」と、
むしろ少しだけ、面倒臭さを覚えたほどだった・・・。
親を探すあては当然無いものだから、仕方なく、その子を家に連れて帰った。
進化前のその子は歩けないものだから、甲羅に負(お)ぶりながら・・・。
今日1日の労力を全て費やしたような気がした・・・。
その途中、その子は腹が空いているように見えたので、
手近な場所からオレンの実を採り、与えようとした。
・・・その子はそれを嫌々げに食べた。
本来は魚食なのだから、当然だろう。
何だか私が木の実を主食にし始めた時の事を思い出す・・・。
3日後、歩く事ができないその子の為に、そこいらで拾ってきた岩や流木を
資材に、洞穴に即席のプールを作った。
力持ちだったので力仕事はそれほど苦ではなかったのだが、私は何しろ不器用なものだから、
資材を集めるのに1日、組み上げるのに2日もかかった・・・。
「我ながら良い出来だ、そう思わないかい?」
出来上がった時、達成感のあまり、ついその子にこう話しかけたのだが、
まだ言葉が分かるはずもない。 その子は欠伸(あくび)をした・・・。
何だか出来栄えに自負していた私自身に決まり悪くなった。
恐らく、私は顔を赤らめていただろう・・・。
そのプールに、ハイドロポンプで海水を入れ、その子を入れた。
その子ははしゃぎながら泳いでいた。私はさっきとは違う達成感を覚えた気がした・・・。
気付くと、私はここ最近出さなかった、笑顔の表情を浮かべていた・・・。
泳いでいたその子は私の顔を見て、
「ものをつくるって、おもしろそうだね!」、
「ああ、そう思・・・」
私はそう言いかけた時、初めて驚いた・・・!
さっきまで私の話すら解ってなさそうだったのに・・・。
「(多分10年前のあの時と同じ、空耳だろう・・・。)」
そう考えた私は、試しに耳を塞いでみた。 耳を塞いでも聞こえるなら、空耳なのだから。
しかし耳を塞いでみたら、その子の話す言葉は聞こえなかった。
聞こえたのは、その子が実際に話している言葉だったのだ・・・・。
「どうしたの? なんでこわいかおをしているの?」
「あ、いや、何でもない・・・。」
普通はありえない事実を受け入れないまま、何だか自然な会話になっていた・・・。
「さっきみたいに、わらったかおでいてよ。 ぼく、パパのそっちのかおのほうがすきだよ!」
「えっと・・・、こんな顔だったかな・・・?」
少し無理矢理ながらに、笑顔を作ってみた。
「うん! やっぱりわらっているかお、だいすき!」
そう言って、水から飛び出し、私に抱きついてきた。
血の繋がりも無いのに、突然「パパ」と呼ばれ、複雑な気持ちだった・・・。
でも、この子の親代わりは他にはいない、私がこの子の「父」として受け入れるしかない。
愛情、というのを感じたのも一理あるが・・・。
卵から生まれ出たその子(プロトーガ)は、私の顔をまじまじと見つめた・・・。
少し心に引っ掛かりを覚えながらも、私はそこを立ち去ろうとした。
するとその子は、私の後を着いて来た。
”卵から生まれたポケモンは、卵を出て最初に見たポケモンを、親だと思い込む”、
そのような事は聞いた事があるので、実際、そんなには驚いていなかった。
「やっぱりこうなるのか・・・。」と、
むしろ少しだけ、面倒臭さを覚えたほどだった・・・。
親を探すあては当然無いものだから、仕方なく、その子を家に連れて帰った。
進化前のその子は歩けないものだから、甲羅に負(お)ぶりながら・・・。
今日1日の労力を全て費やしたような気がした・・・。
その途中、その子は腹が空いているように見えたので、
手近な場所からオレンの実を採り、与えようとした。
・・・その子はそれを嫌々げに食べた。
本来は魚食なのだから、当然だろう。
何だか私が木の実を主食にし始めた時の事を思い出す・・・。
3日後、歩く事ができないその子の為に、そこいらで拾ってきた岩や流木を
資材に、洞穴に即席のプールを作った。
力持ちだったので力仕事はそれほど苦ではなかったのだが、私は何しろ不器用なものだから、
資材を集めるのに1日、組み上げるのに2日もかかった・・・。
「我ながら良い出来だ、そう思わないかい?」
出来上がった時、達成感のあまり、ついその子にこう話しかけたのだが、
まだ言葉が分かるはずもない。 その子は欠伸(あくび)をした・・・。
何だか出来栄えに自負していた私自身に決まり悪くなった。
恐らく、私は顔を赤らめていただろう・・・。
そのプールに、ハイドロポンプで海水を入れ、その子を入れた。
その子ははしゃぎながら泳いでいた。私はさっきとは違う達成感を覚えた気がした・・・。
気付くと、私はここ最近出さなかった、笑顔の表情を浮かべていた・・・。
泳いでいたその子は私の顔を見て、
「ものをつくるって、おもしろそうだね!」、
「ああ、そう思・・・」
私はそう言いかけた時、初めて驚いた・・・!
さっきまで私の話すら解ってなさそうだったのに・・・。
「(多分10年前のあの時と同じ、空耳だろう・・・。)」
そう考えた私は、試しに耳を塞いでみた。 耳を塞いでも聞こえるなら、空耳なのだから。
しかし耳を塞いでみたら、その子の話す言葉は聞こえなかった。
聞こえたのは、その子が実際に話している言葉だったのだ・・・・。
「どうしたの? なんでこわいかおをしているの?」
「あ、いや、何でもない・・・。」
普通はありえない事実を受け入れないまま、何だか自然な会話になっていた・・・。
「さっきみたいに、わらったかおでいてよ。 ぼく、パパのそっちのかおのほうがすきだよ!」
「えっと・・・、こんな顔だったかな・・・?」
少し無理矢理ながらに、笑顔を作ってみた。
「うん! やっぱりわらっているかお、だいすき!」
そう言って、水から飛び出し、私に抱きついてきた。
血の繋がりも無いのに、突然「パパ」と呼ばれ、複雑な気持ちだった・・・。
でも、この子の親代わりは他にはいない、私がこの子の「父」として受け入れるしかない。
愛情、というのを感じたのも一理あるが・・・。
2011年1月21日金曜日
二頭の出会い―今までの苦悩
まだ寒さが体を突き刺すように感じる、とある晩冬の朝、
私はいつものように、海岸を散歩していた。
別にこれといった理由は無い。
ただの習慣なのだ。
最近は散歩しながら、浜辺に落ちている貝一つにさえ、勝手な想像を膨らませ、
考えてしまう毎日である。 10年前のあの日から・・・。
10年前の、ある夏が終わりに近づいた日、いつものように魚(※1)を採り、
食していた。 割合、海に近い洞穴に住んでいるので、甲羅の重さで疲れる事は無い。
まあ甲羅をしょっているのはポケモンの種族の一つとして当たり前なのだが・・・。
海から上がり、魚を食べようとしたその時、聞こえもしないはずの、
魚の声が聞こえてしまったのである。
「なぜ私達でないと、欲求が満たされないのか・・・。」
私は、空耳だ、空耳に違いない・・・、と自分に言い聞かせた。
しかしその声は何度も聞こえてくる・・・。
私は咄嗟(とっさ)に頭を振り、魚を海へ放り投げた。
食料を投げ捨ててしまった訳だが、魚しか食べられない訳ではない、貝だって食べられる。
そう思った私は、少し離れた磯辺で貝(※1)を探し、摘み取ろうとすると、また聞こえた・・・、
「なぜ私達でないと、欲求が満たされないのか・・・。」
何が何だか分からなくなった・・・。 貝を元に戻し、家に戻った。
家に帰って一息ついたら、空腹感がどっと出てきた・・・。 今日は何も食べていなかった・・・。
しかし、また動物系の食料を食べようとしたら、またあの声が聞こえるに違いない・・・。
そんな苦悩のせいで、それらを食べれる勇気が途端に失われた・・・。
仕方なく、洞穴のすぐ外に生えているオレンの実を食べる事にした。
普段は疲労薬として食べ、肉食の私にとっては、味は美味しく感じられないのだが、
さすがにあまりの空腹のせいか、かすかに美味に感じた・・・。
そしてその次の日も、また次の日も、例の声が聞こえてしまう・・・。
その度、オレンの実、時には別の木の実を食べていく日々が続き、今に至る。
さすがに10年間も木の実を食べ続けているのだから、もう魚肉を食べたい、
という欲求は起こらない。 食べようとしたら、例の声が聞こえてしまうのだから・・・。
そんな回想を思い浮かべながら、磯辺の水溜りに映る私、アバゴーラの顔を眺めた。
毎日の散歩の終点、というか折り返し地点である、とある海岸洞窟の入り口で引き返し、
私は家に帰ろうと、復路を歩いた。
海岸を歩いていたその時、遠くに、行きの時には無かった楕円形の、石らしき物が見えた。
近づいて見てみると、それはポケモンの卵だった。
卵を見るのは初めてだったので、つい反射で卵をつついた・・・、
すると予告無く、卵がかえってしまった!
卵の頂点に空いた穴から顔を覗かせたのは、私の以前の姿、プロトーガだった・・・。
※1:魚、貝というのは、他のポケモンの事を指していません。
本当にただの「魚」、「貝」です。
私はいつものように、海岸を散歩していた。
別にこれといった理由は無い。
ただの習慣なのだ。
最近は散歩しながら、浜辺に落ちている貝一つにさえ、勝手な想像を膨らませ、
考えてしまう毎日である。 10年前のあの日から・・・。
10年前の、ある夏が終わりに近づいた日、いつものように魚(※1)を採り、
食していた。 割合、海に近い洞穴に住んでいるので、甲羅の重さで疲れる事は無い。
まあ甲羅をしょっているのはポケモンの種族の一つとして当たり前なのだが・・・。
海から上がり、魚を食べようとしたその時、聞こえもしないはずの、
魚の声が聞こえてしまったのである。
「なぜ私達でないと、欲求が満たされないのか・・・。」
私は、空耳だ、空耳に違いない・・・、と自分に言い聞かせた。
しかしその声は何度も聞こえてくる・・・。
私は咄嗟(とっさ)に頭を振り、魚を海へ放り投げた。
食料を投げ捨ててしまった訳だが、魚しか食べられない訳ではない、貝だって食べられる。
そう思った私は、少し離れた磯辺で貝(※1)を探し、摘み取ろうとすると、また聞こえた・・・、
「なぜ私達でないと、欲求が満たされないのか・・・。」
何が何だか分からなくなった・・・。 貝を元に戻し、家に戻った。
家に帰って一息ついたら、空腹感がどっと出てきた・・・。 今日は何も食べていなかった・・・。
しかし、また動物系の食料を食べようとしたら、またあの声が聞こえるに違いない・・・。
そんな苦悩のせいで、それらを食べれる勇気が途端に失われた・・・。
仕方なく、洞穴のすぐ外に生えているオレンの実を食べる事にした。
普段は疲労薬として食べ、肉食の私にとっては、味は美味しく感じられないのだが、
さすがにあまりの空腹のせいか、かすかに美味に感じた・・・。
そしてその次の日も、また次の日も、例の声が聞こえてしまう・・・。
その度、オレンの実、時には別の木の実を食べていく日々が続き、今に至る。
さすがに10年間も木の実を食べ続けているのだから、もう魚肉を食べたい、
という欲求は起こらない。 食べようとしたら、例の声が聞こえてしまうのだから・・・。
そんな回想を思い浮かべながら、磯辺の水溜りに映る私、アバゴーラの顔を眺めた。
毎日の散歩の終点、というか折り返し地点である、とある海岸洞窟の入り口で引き返し、
私は家に帰ろうと、復路を歩いた。
海岸を歩いていたその時、遠くに、行きの時には無かった楕円形の、石らしき物が見えた。
近づいて見てみると、それはポケモンの卵だった。
卵を見るのは初めてだったので、つい反射で卵をつついた・・・、
すると予告無く、卵がかえってしまった!
卵の頂点に空いた穴から顔を覗かせたのは、私の以前の姿、プロトーガだった・・・。
※1:魚、貝というのは、他のポケモンの事を指していません。
本当にただの「魚」、「貝」です。
登録:
投稿 (Atom)